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――あなたは、私の悲しみを知る方です




耳の奥で、何度も彼女の声がよみがえる。



冷え切ったの部屋中で、左手の指先だけが痺れたように熱かった。




いつの間にか雪はやみ、白さを増した月が窓辺に差し込む。


ぼんやりと照らされた画板に浮かぶ彼女の微笑み。


声にならなかった言葉を、呟く。




――私は… 



「――…私では、あなたの悲しみを癒せないのでしょうか?」





彼女は答えない。


答えるはずがない。





左手に巻かれたハンカチにそっと口づける。




白い花を描こう。



彼女の微笑みには、白い花がよく似合う。



淋しくないように、寄り添うように…白い花を。




「――私からの、贈り物です」










- END -












*


バレンタインの起源とされている、聖ウァレンティアヌスの日をイメージしました。
14世紀頃の中世ヨーロッパでは絵画は職人の工房が取り仕切る「手工業」であり、今日のような「芸術」とはみなされていませんでした。
このあたりからルネサンスにかけて、「画家」という職業が登場し始めるらしい…とのことです。

当時のバレンタインは恋人に身に着けるもの(袖など)や花を贈りあう習慣があったそうで。
ハンカチを贈るのかどうかは分かりませんが、当時のハンカチは婚約の証にもなったほどの「愛の証」だと知り、ついつい採用。

興味深いばかりです。

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